「子育て」というあべこべ。

私たちは知らず知らずのうちに多くのことを逆転させて受け止めています。お念仏に出会うということは、自分があべこべになっていることに気が付くということです。
例えば「子育て」という言葉です。私たちは普通にくちする言葉ですが、子供は親が育てているのではなく、子供自身が育っているのです。親はその手助けをしているにすぎません。子供を育てる、というのは親の立場から言っているので主体である子供にしてみれば「子育ち」でしょう。
これが、子供ではなく花だとよくわかります。花の種は朝顔なら朝顔に、ひまわりならひまわりに育ちます。それぞれの種がそれぞれの花に育つ可能性を持っています。これを仏教では「因」と呼びます。一方花の種が芽吹いて育つにはいろいろな条件があります。水もいりますし、土もいります。太陽の光も大事です。これらのものは種が育つための条件です。これらを「縁」と呼びます。ふたつあわせて「因縁」という言葉になります。私たちが花を育てるという時、水をやったり日の当たるところに出したりするのは条件を整えているのであって育つのはあくまでも花の種です。早く伸びろと引っ張っても伸びません。ちぎれてしまうのがオチです。しかし、これが子供のことになると変わってしまします。子供にはそれぞれいろいろな可能性があります。親はそれを伸ばすように手助けをしているはずなのに、つい思い通りにしたくてあらぬ方向にひぱってしまします。ここでも主体が逆転してしまって、子供の可能性をつぶしているのではないでしょうか。