与えられたものに感謝、「おかげさま」

冥加という言葉は今ではほとんど耳にすることもなくなっています。古い時代劇なのでは悪役が「命冥加なやつめ」などと捨て台詞を言うシーンなどがありましたが昨今は聞かなくなりました。命冥加とは、死すべき場面ですし疑なめぐりあわせで命拾いしたといった意味でしょう。
今でも使う場面としては、お寺や神社に奉納するお金のことを「冥加金」といった場合くらいでしょうか。ここで使っている冥という字は「冥福を祈る」とか「冥土の土産」といった言葉があるようにあの世を連想させます。しかし元は、「くらい、はっきりしない」という意味です。つまり冥加とは「知らないうちに与えられたもの」という意味です。私たちは、生きていく上で特に意識しないものに支えられています。毎日の食事に出てくるものは元をたどれば動物や魚の命です。植物であっても命には変わりありません。私たちはそれを毎日いただいているのですが、命をいただいたという意識はあまりないでしょう。水や空気のなくなったら生きてはいけませんが、ありがたいと感じることは少ないでしょう。現在の人間中心の文明は、人間が自然の一部だということを忘れ自然を利用することの身に走り、感謝することを忘れているのではないでしょうか。仏法ではすべての存在はおたかいに縁によって結ばれ見えるもの見えないものを含めお互いに支えあっていると考えます。「おかげさま」と感じることの大切さを思い出してはいかがでしょうか。