泥の中から美しい花、蓮華

レンゲとカタカナで書くと春の畑に咲いている小さな花を思い浮かべることでしょう。あるいは季節柄、なべ料理には欠かせない散蓮華を思い出すかもしれません。しかし漢字で蓮華と書くと文字通り蓮の花のことです。ハスはインドからアジア全土に広がりました。蓮の花は泥の中に根を下ろしてその中から生えてきたにもかかわらず泥にそまることはなく、清らかな美しい花を咲かせます。そのすがたがこの世の穢れを超えた尊いものの象徴とされました。蓮華は仏教美術にと広く取り入れられ欠かせないものとなっています。仏像の台座や梵鐘の衣装にも取り入れられていますし、大きなお寺では蓮池が設けらていることもしばしばです。
阿弥陀経の中には極楽浄土の蓮池の様子が描かれています。そこには大きな蓮の花があり青い花は青く、黄色い花は黄色く、赤い花は赤く、白い花は白く咲いていると表されています。一見すると当たり前のようですが、私たちの生きている世界ではこのことが当たり前ではありません。自分の思いとは違った生き方をしなければならないことは常であり、それこそ青く咲こうとしているものに赤い花をつけさせるような行為がいくつもあります。経典は自分が自分として素直に生きていけることが、どれだけ幸せであるかということを教えているのでしょう。