地獄のファッションは中国発

今では「悪いことをすると地獄に落ちる」とか「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」といっても、子供にも信用してもらえないでしょうが、かつての人々には地獄というものはリアリティーを持った存在でした。地獄増資や地獄絵図に描かれる凄惨な地獄のありさまは本当にあると信じられていたことでしょう。また一方で落語では「地獄八景」というお話があり、怖いはずの地獄を面白おかしく笑い飛ばすような例もあります。私たちの抱く地獄の様子は中国で作られてものです。例の閻魔様の服装を見ても古代中国の宋様式という中国風の姿をしています。地獄という言葉はサンスクリット語ではナラカといいます。元来は幸いのない、苦しみの実の世界を意味していましたが、中国に至って地下世界の牢獄といったイメージが付与されました。さらに日本に入ってきて因果応報の結果赴く世界として定着しました。地獄は六道輪廻の一つとして数えられていますが、それは遠い世界のことではなく、今生きている私たちが自分の思い次第で六道をめぐることのたとえです。地獄も極楽も死んでから行く世界ではなく今を生きている私たちの生き方ひとつで、今ここに現れてくる世界なのです。