「知恵」と「智慧」。自分はどこにある？

頃は、日本の学校教育は知識の詰め込みに偏っているといわれ、その反省から生きる知恵を身につけなければいけないといわれるようになりました。知恵とは単に「知識」ということだけではなく、また頭の回転が速い「利口・利発」ということでもないということのようです。一言でいえば「人間力」とでもいうものが大切だということなのでしょう。
仏教では「知恵」よりも「智慧」という漢字を当てはめるのが一般的です。仏教でいう智慧とは一切の存在の本質を見通す働きのことです。仏教の基本思想は「すべての存在は、縁によって成り立っている（縁起）のであり、相互に関係しあって存在している。そこには関係性を抜きにして独自に存在するものはない」ということです。
私たちは「自分」というものが確かにあると思いますが、その「自分」は様々な要因が重なり合って今あるのであって自分という独立した存在があるのではない、ということに気が付くことが、仏教の「智慧」です。
「自分が絶対的に存在している」という思いが「我」であり、その視点からあらゆるものを見ていることが間違いだと気付かせてくれるものが、仏法なのです。