渡る世間、鬼がいるのは自分の中

「世間」という言葉は日常生活でよく使われます。世間を騒がせる、世間の噂、世間は広いようで狭いなど。「渡る世間に鬼はなし」とは言いますが、ドラマでは渡る世間は「鬼ばかり」ということのようです。今「世間」という時は、世の中や身の回りの人々、その状況を指す言葉ですが、もともとは仏教用語です。生き物すべてのことを「有情世間（うじょうせけん）」といい、その生き物すべてを住まわせる自然環境を「器世間（きせけん）」といいます。私たちの生きているこの世界はつまるところ迷いの世界です。つまり世間とは迷いの世界のことを指します。仏教はこの迷いの世界から離れることを目的としていますから仏教のことを「出世間の道」とも言います。
この「有情世間」「器世間」を「世間」と略して使っているうちに「世間」は「有情世間」の身を指すようになり、さらに限定されて人間社会のみを指すようになりました。
「世間」は本来、我が身の置きどころにつけられた名称であり、自分の現実を意味しました。世間が鬼ばかりというのなら自分の鬼ということです。世間が悪くて自分は関係ないということはありません。自らの世間をなしている一人だという認識が必要です。