愚痴は煩悩の代表格

自分の思い通りにならないとき、思わず口をついて出るのが「愚痴」です。若い人はカタカナでグチるなどとも書きますが、本当はこんなにむずかしい字です。愚痴とはこぼしたからと言って状況がよくなるわけでのないのですが、くどくど嘆くことを言います。聞かせる相手にとって迷惑な話ですが、こぼしている本人は自分の心の中においておけないのですから、どこか愚かしさが表れています。自分の置かれている立場が順調な時にはあまり愚痴は出ません。愚痴っぽい人は嫌われますが、逆に愚痴一つ漏らさない人はその辛抱強さを褒められるものです。
仏教でいう「愚痴」は「愚癡」とも表記します。仏の智慧に暗いこと、衆生の根本的な無知を指します。数ある煩悩の中でも「貪欲（とんよく）」「瞋恚（しんに）」「愚癡」は仏道を歩む者にとっての三毒と名付けられるように、最も根強い煩悩です。様々な条件（因縁）が相まって今の私の状況があります。それは固定的なものではありません。別の条件が整えば今は愚痴一つこぼさない人でも、グチるようにもなります。仏陀の目覚めた、縁起は一見当たり前の道理のように思えますが、かたくなにそれを見えなくさせる根源こそが「愚癡」という煩悩です。