七宝の牢獄という世界

七宝
七宝焼きという装飾品があります。この七つの宝というのは仏典に書かれている「金（こん）・銀（ごん）・瑠璃（るり）・玻瓈（はり）・硨磲（しゃこ）・赤珠（しゃくしゅ）・碼碯（めのう）」の七つです。七珍ともいわれます。古くから貴重で美しいものの象徴として、また富の象徴として使われます。日本でも古来から珍重すべきもののたとえとして古典のなかにも表れます。
仏典では浄土の美しさを表すために使われますが、また別のところでは七宝で作られて牢獄があると説かれています。貴重なもので囲まれた部屋の中で何不自由ない生活をしていながら満たされない、本当の生きる意味が分からない状態を牢獄に例えているのです。
現代を生きる私たちもこのような状態にあるといえるのではないでしょうか。いろいろな情報機器があふれ居ながらにして世界の様子がわかります。インターネットを通じて世界中から欲しいものが手に入ります。しかしどんなに情報があふれていても生きる意味を教えてくれるでしょうか。たくさんのものを手に入れてもそれが生きる喜びとなっているでしょうか。あまりに便利な世の中になって帰って生きることの本当の意味が見えなくなってきているのではないでしょうか。