無慙愧は名づけて人とせず。

「恥ずかしい」というのは日本の文化の一つだといわれます。どこの国の言葉にも「恥ずかしい」に相当する言葉はあるでしょうが日本人は自分の都合と同じくらい自分の行動が恥ずかしくないことか、という点を気にするといわれます。
仏教でも「慙愧（ざんき）」という言葉があります。自分で「恥ずかしい」と気がつくことを「慚」といい、そして「恥ずかしいことをしました、申しわけないことをしました」と他の人に謝る状態を「愧」というのです。また「慚は人に羞づ、愧は天に羞づ。」とも言います。他人が見ているから恥ずかしいのではありません。誰も見ていなくても恥ずかしいことは恥ずかしいと感じるということです。
現代は権利の意識ばかりが高くなり恥ずかしいということが薄れてきているように感じます。経済活動、簡単に言えば欲望がすべてを正当化するような風潮は恐ろしいことです。人間は宗教がなければ何をするかわかりません。煩悩のままに生きている状態はブレーキが壊れてどこに行くかわからない車のようです。ブレーキの壊れた車は乗っている人はもとより周りの人も傷つけます。そこで恥ずかしさ、つまり「慙愧」を知らしめるものが仏法です。恥ずかしさを知るからブレーキがかかってくれるのです。