不安とともに生きる道

今、世の中はコロナウイルスの感染拡大が終息する見通しが見えない中で大きな不安にさらされています。どうすれば不安がなくなるのでしょう。この問に対して仏教は「不安はなくならない」と答えます。不安とは見通せない未来に関してあれこれ考えてしまうから生まれてきます。人は他の動物と違い今を生きるだけでなく未来を考えることができます。このことは優れたことかもしれませんが、同時にいろいろ思いめぐらせることが不安を生み出しているのです。不安というのは人生まれたときから一生ついてくるのだといえます。病気が蔓延して人々がなくなっていくということはこれが初めてではありません。蓮如上人の時代にも疫病が流行し多くの人がなくなりました。その際に上人は「疫病によって人は初めて死ぬようになったわけではない、生まれたものはみな死に向かっていいるので疫病がなくてもいずれ死ぬ実が今回は疫病で死んでいくということだ。驚くことではない」といった趣旨のことを述べられています。このことは、どうせ死んでいくといった運命論や、死んでもかまわないという開き直りではありません。「不安から逃げずに、むしろ不安をきっかけに、いつかは終わる人生を見つめなおし、ともに今を生きる」という決意の言葉です。不安を消すことはできませんが、不安を不安のまま受け入れてくれる人、共に歩む人と出遇えた時不安の中をしっかりと歩んでいけるのです。