縦糸と横糸、教えと私。

中島みゆきさんの歌にも「糸」というのがあります。その歌詞には「縦の糸はあなた、横の糸は私」と歌われています。横の糸である私の人生は私の思いで満ちています。私たちはいつも私の思いを世界の中心において生きています。思いが通ることがよいことで思い通りにならないことは悪いこと、思い通りに動いてくれる人は好きですが、思い通りに動いてくれない人は嫌いです。いつでも自分の思いを最優先に生きているのが実態ではないでしょうか。
でも自分の思い通りに世の中が動くとは限りません。むしろ思い通りにならないのが人生です。それは当然のことで、世の中、この世は無限といっていい様々なものの関係の上に成り立っているからです。私の思いもその一つですが、そのほかにも数限りない思いがあり、自然の営みがあり、数限りないいのちの営みがあるのです。その中で自分の思いだけを握りしめていくことはできないのです。そこで自分の思いとは別の「あなた」が必要になってきます。それは別の人間ということではありません。その人もまた、その人の思いで生きているのですから、結局人の思いはあてにはなりません。そこには真実の言葉、真実の教えである尿来の本願が必要なのです。如来の本願の前に立った時私の思いがどれだけ身勝手なものであったのかが照らし出されます。そして縦糸と横糸がおられて布ができていくように真実の教えと私の人生が一つになって初めて本当の人生の歩みが生まれてくるのです。