出世も仏教の言葉

今は相撲の秋場所が盛り上がっています。
力士が幕内に入って大関、横綱となることや、サラリーマンが平社員から係長、課長、部長、と役職が変わっていくことを出世と言っています。
また魚の中には成長するにしたがって名前の変わるものがいます。すずきは、せいご、ふっこ、すずきと変わり、ぶりは、わかし、いなだ、わらさ、ぶりと変わりますがこのような魚を出世魚といいます。今の若い人には出世に対する執着心が薄い人が多くなったといいますが、それでも多くの人が出世のために勉強や仕事に血眼になっています。
しかし出世という言葉は、出家して仏道修行をすることを意味します。もっと根本的には仏陀がこの世の中に現れることを指す仏教用語です。
『大無量寿経』には「如来がこの世にあらわれたのは、教えをひらいて雑草のように群れて生きている衆生を救い真実の利を与えるためである」と記されています。
「真実の利」とは、自分の欲望が思い通りになるということではありません。いかなる環境にあっても、自分自身の存在の尊さ、厳かさに気付いて、喜びをもって今をたくましく生きるという利益です。仏教では今世の中でいわれている「出世」ではなく「いま自分がこのように生れ出たのは本当に何のためだったのか」という伊ことを静かに考えよ、と呼び掛けています。