「縁起」に良いも悪いもない。

「縁起」という言葉も本当の意味から離れてしまった言葉です。仏教でいう縁起は「すべてのものは無数の因縁によって成り立っている」という基本的な思想を指します。私という存在もそれ自体であるのではなく、無数の因縁の結果として私となっているということなのですが、私たちの受けとめは違います。まず「私」があってそこにいろいろな因縁が寄ってくる。ですから良い縁には来てほしいし、都合の悪い縁には来てほしくないということになります。一番根本のところがひっくり返っているのです。「縁起が良い・悪い」とか「縁起を担ぐ」などといった時の縁起はお寺や神社の由来・沿革・起源を表した「縁起絵巻」からきているのでしょう。
「縁起」とはものの成り立ちの根本を表す思想ですからそこに、良い・悪いはないはずなのですが、自己中心の考えから言えば、自分に都合の良い因縁だけを求めます。そうなれば「福は内、鬼は外」となってしまいますが、無数無量の因縁が私になっているのであればどんな因縁も私にとっては必要だったということに気が付くでしょう。そうなれば「福は内、鬼も内」と、言えるようになるのではないでしょうか。